ゴブスタン・ロック・アートの文化的景観は、中央部の半砂漠地帯、カスピ海に面した断崖の上に広がる岩石台地に位置する遺跡です。この一帯には6000点以上の岩絵が集中しており、上部旧石器時代から中世に至るまで、約4万年にわたる岩絵の伝統を伝えています。描かれているのは、人物像や舞踏の場面、動物、闘牛、キャラバン、太陽や星などの天体象徴と多岐にわたります。
あわせて、人が居住した洞窟や集落、埋葬地の跡も見られ、最終氷期後の湿潤な時期にこの地で人々が活発に活動していたことを示しています。遺跡は3つの区域からなり、総面積は537haで、より広大な保護区域であるゴブスタン保護区の一部を構成しています。狩猟や漁労、信仰生活の記録として、考古学的にも美術史的にも高い価値を持つ遺跡です。
当時の人々は、乾燥した草原から漁業が可能な広大なカスピ海周辺の地までを生活の舞台としており、変化する自然環境への適応の様子もうかがえます。数千年にわたり描き継がれてきた岩絵の密度と質の高さは世界的にも稀であり、先史時代の人々の精神世界を今に伝える野外美術館とも言える場所です。岩絵に刻まれた舟の絵は、当時の航海の様子を伝える資料としても注目されています。