キューバ中南部のトリニダとその近郊に広がるロス・インヘニオス渓谷は、18世紀末から19世紀にかけて砂糖産業で繁栄した町と製糖工場群からなる遺産です。トリニダの町には、スペイン植民地時代の面影を残す石畳の街路とパステルカラーの外壁を持つ邸宅が立ち並び、鉄格子の窓や中庭を備えた住宅建築が当時の富裕な砂糖農園主の生活様式を伝えています。
近郊のロス・インヘニオス渓谷には、サトウキビ栽培と製糖に用いられた工場の遺構や監視塔、奴隷労働者の居住施設の跡が残されており、砂糖産業を支えた労働制度の実態を伝える貴重な物証となっています。19世紀のカリブ海における砂糖産業の全盛期の姿を町と農村景観の両面から示す遺産として、1988年に世界遺産に登録されました。
渓谷には最盛期に70以上の製糖工場が稼働していたと伝えられ、当時使用された蒸気機関の一部や鐘楼として使われた見張り塔も残されています。トリニダの町並みは19世紀半ばに砂糖価格の下落で発展が停滞したことがかえって幸いし、大きな改変を受けずに当時の姿を留めています。
中央広場に面する邸宅には、当時の富豪が輸入した装飾タイルやシャンデリアが今も残され、砂糖貿易で得た富の大きさを物語っています。
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