バルカン半島西部のボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビアの4か国にまたがるステチュツィは、12世紀から16世紀にかけて建てられた中世の石造墓碑群です。
ステチュツィと呼ばれるこれらの墓石は、単純な石板から装飾的な棺形、家形のものまで多様な形状を持ち、表面には幾何学文様、狩猟や舞踏の場面、十字架やロゼット文様など、当時の宗教観や社会生活を反映した図像が刻まれています。
ボスニア教会と呼ばれる独自の宗教的伝統やスラブ系諸民族の土着信仰が融合した様式を示すとされ、周辺のキリスト教美術やイスラム美術とは異なる独自の造形言語を持つ点が特徴です。墓碑は個別の墓地や共同墓地に集団で配置されている例が多く、当時の埋葬習慣や社会構造を伝える貴重な考古学的資料としても重視されています。
約2万点が確認されているステチュツィのうち、代表的な28か所の墓地群が構成資産として選定されており、地域ごとの様式の違いも比較検討できます。刻まれた文字は古代スラブ文字の一種であるボスニア文字(ボサンチツァ)で記されており、地域固有の文字文化の実例としても言語学的に重要視されています。
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