円形都市ハトラは、イラク北部の砂漠地帯にある古代都市の遺跡で、世界遺産に登録されています。紀元前3世紀から紀元後2世紀にかけて、パルティア王国の影響下にある隊商都市として繁栄し、東西交易路の要衝として栄えました。二重の城壁に囲まれた円形の都市計画を持ち、内部には太陽神シャマシュをはじめとする複数の神々を祀る大神殿が残されています。
建築様式にはヘレニズム、ローマ、パルティア、地域固有の要素が融合しており、東西文化の交差点としての性格を色濃く反映しています。ローマ帝国の攻撃にも二度耐えた堅固な防衛施設としても知られています。神殿の彫像や柱頭には人物像と幾何学文様が組み合わされ、各文化圏の造形要素が一つの都市空間に共存していた様子を伝えています。
周囲には隊商の駐屯地や住居区の跡も広がり、砂漠を行き交う交易者たちの拠点としての機能を具体的に示しています。厚さ数メートルに及ぶ城壁には多数の塔が配置され、当時の高度な軍事建築技術も併せて確認できます。2015年以降、過激派組織による破壊行為が確認され、一部の神殿彫刻が失われましたが、国際的な調査団による被害評価と修復に向けた取り組みが進められています。
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