エーゲ海東部のサモス島にあるピタゴリオンとヘラ神殿は、古代ギリシャの港湾都市とその聖域からなる遺跡です。ピタゴリオンはかつてサモス島の中心都市であり、数学者ピタゴラスの生誕地とされています。
紀元前6世紀、僭主ポリュクラテスの統治下で、港湾施設や城壁、そして水不足を解消するために山を貫いて築かれた延長約1キロメートルの地下水道トンネル「エウパリノスの水路」などが整備されました。この水路は両側から同時に掘り進めて中央で合流させる高度な測量技術によって建設され、古代の土木技術の水準を示す事例として評価されています。
近郊のヘラ神殿は女神ヘラを祀る聖域で、巨大な神殿の柱の一部が今も残されています。都市計画と土木技術、宗教建築が融合した遺跡として、1992年に世界遺産に登録されました。エウパリノスの水路は古代ギリシャの歴史家ヘロドトスも著作の中で称賛しており、その存在は長く伝承として語り継がれた後、19世紀の調査によって実在が確認されました。
港湾都市としての遺構には防波堤の跡も残されています。サモス島は哲学者エピクロスの生誕地としても知られ、古代地中海世界における学問や思想の発信地のひとつでもありました。
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