ファテープル・シークリーは、インド北部ウッタル・プラデーシュ州にあるムガル帝国の旧都跡からなる世界遺産です。1571年、皇帝アクバルが聖者シェイフ・サリム・チシュティーへの帰依から新都の建設を命じ、赤色砂岩を用いた宮殿群、モスク、官庁施設などがわずか十数年のうちに一体的に築かれました。
ブランド・ダルワーザと呼ばれる高さ約54メートルの巨大な門を持つジャーミ・マスジドや、幾何学的に整えられた中庭を囲む宮殿群は、ヒンドゥー、イスラム、ペルシアなど多様な建築様式が融合したムガル建築の代表例とされています。
水源の不足などを理由にわずか約15年で都は放棄され、以後大きな改変を受けなかったため、建設当時の都市構造や建築意匠がほぼそのままの姿で保存されています。宮殿の各建物には皇帝の生活様式や統治理念が反映された精緻な意匠が施されており、当時の宮廷文化を具体的に伝える資料としても評価されています。
皇帝が家臣や外国使節と謁見した公的謁見殿や、寵臣との対局に用いたとされる巨大なパチシ盤の遺構も残り、宮廷における日常の様子をうかがわせます。彫刻を排した幾何学文様を多用する簡素な装飾も特徴の一つです。
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