ビーソトゥーンは、イラン西部ケルマンシャー州にある岩壁の浮彫と楔形文字碑文からなる世界遺産です。古代からの交易路沿いの断崖に、アケメネス朝ペルシア帝国の王ダレイオス1世が紀元前6世紀末に自らの即位の正統性を示すために刻ませたもので、王が反乱者たちを従える場面の浮彫と、古代ペルシア語、エラム語、バビロニア語の三言語による長大な碑文が並置されています。
この碑文は19世紀にイギリス人研究者ローリンソンによって解読され、楔形文字の解読史における画期的な資料として学術的に重要な位置を占めています。断崖には碑文以外にも、先史時代からイスラム期に至る各時代の岩窟や浮彫が残されており、長期間にわたり人々が往来し利用してきた場所であることを示しています。
碑文はダレイオス1世が各地の総督に写しを送らせたことも記録に残り、帝国全土に統治の正統性を周知する手段としても機能したと考えられています。碑文が刻まれた岩壁は地上からの接近が困難な高い位置にあり、刻字を終えた後に足場を取り払うことで後世の改変を防ぐ意図があったとも推測されています。
この立地条件が、碑文が長期間にわたり大きな損傷を受けずに保存されてきた一因ともなっています。
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