アジャンターの石窟寺院群は、インド中部マハーラーシュトラ州のワゴーラー川沿いの崖に掘削された29の仏教石窟群からなる世界遺産です。紀元前2世紀頃から紀元後6世紀頃にかけて2つの時期に分けて開削され、僧院として用いられたヴィハーラ窟と、礼拝堂として用いられたチャイティヤ窟の両形式が含まれています。
石窟内部には仏陀の生涯や前世を描いたとされるジャータカ物語を題材とする壁画が数多く残されており、インド古代絵画の到達点を示す資料として国際的に高く評価されています。彩色には天然の鉱物顔料が用いられ、人物の陰影表現や衣文の描写には高度な技法が駆使されています。
9世紀頃に周辺の宗教活動が衰退したことで石窟群は長らく密林に埋もれていましたが、19世紀初頭にイギリス人によって再発見されました。密林に覆われていたことがかえって壁画や彫刻の保存状態を良好に保つ結果となったと考えられています。石窟内には仏陀や菩薩の坐像・立像も多数彫られ、絵画と彫刻が一体となった総合的な仏教美術空間を形成しています。
崖に沿って馬蹄形に並ぶ石窟群の配置も、当時の巡礼動線を考慮した計画的なものとされています。
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